環境庁、環境カウンセラー登録制度を創設。人材初堀・ネット化も

「環境カウンセラー登録制度」創設

(1996年9月9日、日刊工業新聞)

「環境カウンセラー登録制度」

環境庁は「環境カウンセラー登録制度」を創設する。

「環境カウンセラー登録制度」とは

これは事業者や市民などの環境保全に向けた取り組みを支援・促進するため、適切な助言を行う人材を推奨し、登録する制度。

資格者

このため環境に関し、広範で専門的な知識、あるいは豊富な活動経験(5年以上)を有する人が資格者となる。

申請方法

毎年1回、事業者部門と市民部門に分け申請者を募る。

審査方法

環境庁が指定するテーマに関する論文審査と面接審査を経て、合格した人は両部門ごとに登録され、登録名簿は公表される。

最大500人程度の登録

1996年度は11月から1ヶ月間申請を受け付け、1997年3月には「最大500人程度の登録を行いたい」(環境庁)としている。

申請書など

申請書などは日本環境協会(東京都港区虎ノ門1の5の8)が扱う。

「環境パートナーシップ事業」
環境保全活動の展開を目指す

環境庁は、事業者、NGO、自治体、消費者など各主体の参加によって環境保全活動の展開を目指す「環境パートナーシップ事業」に取り組んでいるが、今回の登録制度の創設も、「環境パートナーシップ事業」を具体的に推進するための一環と位置付けている。

拡大傾向

民間企業や市民団体などにおける環境保全への取り組みは、このところ拡大傾向にある。

意欲は十分

しかし、意欲は十分あるものの、そのための手法が分からず手をこまねいているところが増えてきている。

中高年層を中心に急増

一方では、これまでの経験や知識を生かして環境ボランティア活動に取り組んでいこうとする人が特に中高年層を中心に急増している。

環境活動の促進

環境庁は、こうした双方のニーズをうまく組み合わせ、環境活動の促進を図るための支援策として環境カウンセラー登録制度を創設したもの。

人材初堀・ネット化
狙い

広く人材の発掘を行い、国からお墨付きを与え、環境保全活動において一定のレベルを確保していこうとする狙いもある。

環境ビジネス

人的ネットワークづくりも目指している。
また、環境ビジネスとしての広がりが期待できる。

事業者部門
高評価な資格

事業者部門については、企業の環境管理部門などで5年以上の実務経験が求められるほか、公害防止管理者など環境保全に関する資格があると高く評価される。

環境先進国では

環境先進国の欧州各国では、国ごとに多少バラツキはあるものの、この制度がすでに根付いている。

アドバイス活動で貢献

とくにフランスは1988年から採用しており、自治体向けに廃棄物の減量、自然保護、大気汚染防止など様々なアドバイス活動で貢献している。

“精神的民度”が問われる

日本においてもこのシステムがこれから本格導入されることになるが、スンナリ定着するかどうかについては、国民全般の環境意識のレベル、さらに具体的な運用面では改めて“精神的民度”が問われることになりそうだ。

エコ・リーダー認定へ 東商 中小の環境活動支援

対象は「環境社会検定試験(エコ検定)」の合格者

(2007年9月11日、産経新聞)

環境保全活動のリーダー育成
10月から本格化

東京商工会議所は、企業の環境保全活動のリーダー育成を10月から本格化する。

企業内でのグループ活動を支援

2006年スタートした「環境社会検定試験(エコ検定)」の合格者を対象に、企業内でのグループ活動を支援するほか、上位資格となるエコ・リーダーの認定を年明けにも始める。

環境保全活動の拡充
金融機関と連携

金融機関と連携し、社員の一定数以上が有資格者の場合は、融資利率を引き下げるなどの特典の強化も進め、環境保全活動の拡充を図る。

エコ検定とは
公的資格検定

エコ検定は東商が主催する公的資格検定で、環境問題についての総合的な知識を問う。

16,084人が合格

2006年10月に第1回、2007年7月に第2回の検定試験を行い、これまでに16,084人が合格している。

「エコユニット」

東商は、10月から2人以上の合格者がいる企業や事業所、商店街、団体などの環境保全活動を「エコユニット」として認証。

エコユニットマーク

エコユニットに登録されれば、活動を証明するエコユニットマークを与え、パンフレットやポスターなどで利用できる。

交流支援や特典

また、インターネット上での情報提供や団体同士の交流支援、関連イベントへの優待などの特典も設け、企業などの環境保全活動を促進する。

「エコ・リーダー」資格
来春にも設置

さらに、エコ検定合格者の上位資格として、企業内などの環境保全活動でリーダーとなる人材を養成する「エコ・リーダー」資格を来春にも設置する。

研修

東商は緑化、食・農といった分野ごとに専門性の高いテキストを作成、実践的な知識やノウハウの習得を目的とする研修を行い、修了者を「エコ・リーダー」に認定する。

外部の5団体と連携

研修は環境カウンセラー全国連合会や産業環境管理協会など外部の5団体と連携し、ビジネスの現場などで利用できるノウハウの取得を図る。

環境保護に対応する規格
ISO

企業の環境保護に対応する規格にはISOのような国際的なものもあるが、取得や更新の手間、費用などの負担が重く、中小企業では導入を断念したり、いったん導入したものの更新を見合わせたりするケースも少なくない。

裏打ちできる仕組み

東商は「エコ検定の取得者数やエコユニットとしての活動が、企業の環境保全に対する取り組みを裏打ちできる仕組みにしたい」(検定事業部)と意義を説明。

融資制度を導入

企業側が導入を進めるメリットとなるよう、新銀行東京と連携して社員の過半数がエコ検定の合格者の場合、融資利率を所定金利より0.1%優遇する融資制度を導入。
他の金融機関にも同様の施策を働きかける。

「マッチング事業」

エコユニット登録企業を対象に、インターネットを使って資材調達や新規取引などを斡旋(あっせん)する「マッチング事業」の導入なども検討する方針だ。

環境カウンセラー、アセス書案に反論 ポーラの美術館建設 / 神奈川

多数の疑問点

(1997年4月16日、朝日新聞)

ポーラ美術振興財団
地元説明会

箱根町仙石原の小塚山に美術館の建設を計画しているポーラ美術振興財団が、現地調査に基づいて作った環境影響予測評価(アセスメント)書案の地元説明会を開いたのに対し、環境庁の環境カウンセラーが疑問点が多いとして、1997年4月15日までに反論をまとめた。

意見書

「箱根を守る会」のメンバーでもある、この環境カウンセラーの見解は、守る会が知事に提出する意見書に盛り込まれる。

自然公園指導員

反論をまとめたのは、環境庁と県の自然公園指導員でもある箱根町湯本、川崎英憲さん(50)。

環境カウンセラー

今年度の環境庁の新しい登録制度による、環境カウンセラーの資格を持っている。

反論内容
建設計画地の自然度

反論は、まず建設計画地の自然度について、「県教委や守る会の現地調査ではブナ、ヤマボウシ群集が分布しており、この植生の自然度を区分する自然度9でなければならない」とした。

別の林と置き換え

ポーラの評価書案はヒメシャラ群落・イヌシデ群落として自然度7.8と評価したが、これは別の林と見ている「置き換えである」と指摘した。

県の指導

自然度8~9の地域は、県の指導でほとんど開発は許されていない。

動物の生息地
生息が確認されていない

建設で動物の生息地がなくなるが、ポーラの調査でハコネサンショウウオやアマゴの生息が確認されていない点にも疑問を投げ掛けた。

上流域の造成工事

また、上流域の造成工事で渓流に土砂やシルトの堆積(たいせき)が起こり、生物が絶滅した例が近隣にあるとした。

動物群衆の調査

これは、以前生息したとされるような動物群衆の調査をする際には調査地域を広く取るほか、実例を見た上で影響評価をすべきであるという指摘だ。

野鳥の調査

野鳥の調査で確認されていなかったハイタカが、地元説明会では「飛んでいる姿は見た」と変わったのは、調査日数が少ないか、調査領域が狭いか、ずさんなためだ、などとも指摘している。

調査はこれからも実施
ポーラ側

この反論について、ポーラ側の調査に当たった緑生研究所の井上康平代表は「計画地には人の手が加わった二次林があり評価は下がるが、ブナの存在を重視して正当に評価したつもりだ。

工法も、調査に基づいて周囲や渓流へ影響がないようにしたはずだ。

調査はまだ一般的なもので、鳥類などについて追跡が必要なものについては、これからも実施する」と話している。

環境影響予測評価書案
<環境アセスの手順>

ポーラ美術振興財団の美術館建設計画について、県条例に基づく環境影響予測評価書案が1997年4月21日まで、県庁のほか地区行政センターなどで縦覧されている。

意見書

住民側から意見書が提出されれば、ポーラ側が見解書を出す。
県は住民側が再度意見書を出すことが出来るよう行政指導しており、影響評価書案をめぐるやりとりが続く。

公聴会

この後、県が公聴会を開き、関係住民が公述人となって意見を述べることができる。

審査書

その後、関係市町村長の意見と、すでに審査を始めている環境影響審査会の意見とを受けて、県が環境影響評価のまとめに当たる審査書を作成する。
審査書は事業者に送られ、正式な予測評価書が作られる。

事業の届け出

これの縦覧を経て環境影響評価の段階は終わり、事業の届け出となる。

環境アセス審査の平均

これまでの環境アセス審査の平均は、400日という。